「酒が強い弱い」について

お酒が強いかどうかは基本的に遺伝によるものが大きいとされています。モンゴロイドである日本人においては、約5割の人はお酒に強く、約4割の人はあまりお酒に強くなく、約1割の人はほとんどお酒を飲めない遺伝子を持っていると言われています。

その3つのタイプを遺伝子の型で表すと以下のようになります。

  1. Glu/Glu型(お酒に強い遺伝子):日本人の約5割
  2. Glu/Lys型(あまりお酒に強くない遺伝子):日本人の約4割
  3. Lys/Lys型(ほとんどお酒を飲めない遺伝子):日本人の約1割

この型の違いにより何が変わるのかというと、アルコールの分解の仕組み という記事でも紹介したように、アルコールの分解には二段階の過程があり、それぞれ「アルコール脱水素酵素(ADH)」「2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」という酵素が関わっているのですが、この酵素を制御する遺伝子の型が変わることで生成されるアミノ酸が変わり、酒が強い弱いという差が出てくるのだそうです。

でも、酒の強さって本当に遺伝だけの要素で決まってしまうものなのでしょうか?

どうやらそれだけではなさそうです。実際に、お酒を飲み続けていたら昔に比べて量が飲めるようになったとか、しばらく飲んでなかったらお酒が弱くなったという話は、自分の体験でも人から聞いた話でもあると思います。これは気のせいではなく実際に「とある酵素」の働きにより起こっています。

それは先ほどの記事でも登場する「ミクロソーム・エタノール酸化系(MEOS)」という酵素です。

アルコールがアセトアルデヒドに分解される第一段階では、その70〜80%を「アルコール脱水素酵素(ADH)」が分解するのですが、量が多くなってくるとMEOSという酵素が助っ人としてアルコールの分解を助ける役割を果たします。そして、このMEOSというのはアルコールを分解し続けていると、なんとパワーアップ(活性)するようで、これが酒が強くなるということが実際に起こる理由です。

ただし注意しなければならないことがあります、この酒が強くなるという現象は「②Glu/Lys型(あまりお酒に強くない遺伝子)」の方に多く見られる傾向のようですが、MEOSが活性化されてアルコール→アセトアルデヒドの第一段階は促進されても、アセトアルデヒド→酢酸への分解は助けない(遺伝要因で決まってしまう)ので、有害物質であるアセトアルデヒドが体内にたまりやすく健康リスクが高くなると言われています。

元々、酒が飲めなかったのに鍛えられて酒が強くなったという方は注意が必要かもしれません。

トラさん

余談ですが、薬を飲んでいるときにお酒は飲んではいけないという話をよく耳にしますが、それはこのMEOSという酵素が元々薬などの代謝を行なっているため、薬とお酒を同時に服用することで、薬が効きにくくなってしまったり、逆に薬が強く長く聞きすぎてしまうこともあるようです。薬を飲んでいるときはお酒は控えましょう。